
IMAGES OF NATURE(自然の印象)
1999 & 2000
Images of Nature(自然の印象)2000年 和紙、木炭、はしご、鳥かご、地球儀、タイプライター、枝、木の小枝
宮森敬子のインスタレーションは、見る人が心をほどき、静かに作品と向き合う時間を生み出す。繊細で移ろいやすい作品のあり方が、私たちに深い感覚で自然とつながる体験をもたらしている。
手漉きの和紙に木炭で写し取った樹木の表面は、豊かな質感を生み出す。白樺の樹皮を思わせる紙で覆われたタイプライターなど、普段見慣れた物も、まるで森の中にいるかのような静けさと違和感を感じさせる存在へと変わる。
和紙で物体を包み、木炭で痕跡を残すという丁寧な工程を通じて、人の手によって作られた物が自然へと還っていくように感じられる。一方で、さまざまな樹木の拓本を組み合わせ、自ら「木」を立ち上げる試みも行われている。
人工物と自然、その境界にそっと寄り添いながら、宮森の作品は、ふたつの世界のあいだに生まれる静かなつながりを私たちに示している。
《Images of Nature》展より、さまざまな作品群
Typewriter – Energy《Images of Nature》展より
オブジェは、和紙というもうひとつの皮膚をまとう。
それは、すべての命をつなぐ本質を映す、ひそやかな象(かたち)。
物から紙へと移るのは、自然の記憶、そしてその魂そのものである。
— メアリー・トーマス
1999年ペンシルバニア大学フォックス・ギャラリーで開催された《Images of Nature》展は、人の身体感覚に寄り添うように構成された。空間には椅子が置かれ、人の気配を感じさせることで、人間が生きる場と、そこにある物との象徴的なつながりが浮かび上がるよう意図されている。
Night Becomes Day Images of Nature展(1999年)椅子、枝、木炭、藍、和紙
今日、物質的に豊かな暮らしを享受している私たちは、かつて森が「交換の場」であったことを忘れがちである。 樹をきるという行為は、私たち が単にそれを利用すると言う目的とは別に、目には見えない「ここ」と他の場所、つまり森と製品化されたもの、それを使う人々をつなぐ行為でもあった。
Night Becomes Day ディテール