
表面のしるし
MARKS OF SURFACE
2018 & 2019
I. 《表面の印(しるし)》— 福井にて(2018年)
《Marks of Surface(表面のしるし)》は、2018年、福井県で開催された第30回いまだて芸術紙展にて初めて発表された。
高さ5メートルに及ぶこのインスタレーションは、異なる厚みの和紙と、宮森による樹拓を素材とし、2つの竹の輪から吊るされている。内側の層には、極めて繊細な加工が施された雁皮紙が何層にも重ねられている。和紙の半透明の性質により、鑑賞者と作品とのあいだに起こる関係性が、空間そのものを包み込み、見る者を別の世界へと引き込んでいく。そして、作品内部に入った身体の熱に呼応するかのように、和紙がわずかに揺らぎ、応答する。
拓本に使われたのは、福井に点在する5つの神社の御神木である。それぞれの木の記憶がひとつの作品としてつながり、大地から天へと伸びあがるように、内側から外側へとエネルギーを放っている。
和紙が空間をたゆたい、鑑賞者の身体とつながっていくと、そのシルエットが外から浮かび上がる。見る者自身の存在が、和紙越しにあらわになる瞬間である。
宮森は、人間の「むきだしの本質」に触れようとした。雁皮紙という繊細な素材を通して、鑑賞者が自身のエネルギーを感じ取り、目には見えない存在の側面と向き合うための空間を目指したのである。
表面のしるし 2018年 和紙、木炭、竹、ワイヤー 直径221cm × 高さ500cm
II. 《表面の印(しるし)》— 横浜にて (2019年)
2018年、福井で初公開された《Marks of Surface(表面の印)》は、翌年2019年横浜のGalerie Parisで開催された展覧会 Birth–Growth–Recursion展に合わせて再構成された。福井での展示では、和紙が放つエネルギーを通して大地とのつながりを表現し、高さ5メートルに及ぶ構造によって、自然の壮大さを象徴していた。
横浜での展示では、上部の「塔」の部分を取り除き、作品の高さではなく、インスタレーション内部における身体との関係性、パフォーマーとの対話に焦点が置かれた。塔を伴わないこのバージョンでは、中央のドームも存在せず、観客やパフォーマーが自由に作品内部を行き来し、新たなかたちで空間を経験できる構成となっている。
音楽とダンスのパフォーマンスと呼応するかたちで、宮森は「儚く生まれゆくもの」と「永遠に循環するもの」のあいだにある感覚の共鳴を探っている。

Birth–Growth–Recursion展(横浜・Galerie Paris)にて 2019年
パフォーマンス:タマラ、西尾樹里