SCHUYLKILL 環境教育センタープロジェクト
SCHUYLKILL ENVIRONMENTAL PROJECTS
2007年 & 2008年
ヒューマン・バードハウス
本作は、2008年にアメリカ・フィラデルフィアのシュイルキル環境教育センターにて展示された、自然と都市環境の関係性を探る屋外インスタレーションである。
宮森は、納屋の正面壁に大規模な樹拓コラージュを制作し、その周囲に約25個の小型バードハウスを配置した。いずれのバードハウスも、彼女が採集した樹木の表皮を写し取った木炭による樹拓和紙で覆われている。
本作が注目するのは、人間と動物における「住まい方」の違いである。多くの動物は、自身の体に見合った、自然の脅威を避けつつ安心して暮らせる最小限の空間を選ぶ。一方で、人間の住居はしばしば過剰な規模となり、自然との距離を拡げてしまう傾向にある。
「人間用の巨大な鳥の巣箱」としての納屋と、その周囲に点在する実際の鳥のための小さな巣箱との対比により、本作は人間と自然の関係性を、ユーモアを交えつつも鋭く問いかけている。
バードハウス 2008年 バードハウス、和紙、木炭、ポリウレタン 約20.3 × 15.2 × 19.1 cm
The Washi was secured onto the barn with a wheat paste that can withstand all weather, while also being nontoxic and non-damaging to the barn itself after removal. Miyamori created the rubbings from trees around the installation site with charcoal made from tree bark collected from the Schuykill Environmental Center.
ヒューマン・バードハウス 納屋、バードハウス、和紙、木炭、ワイヤー (2008年 Ghosts and Shadows展)
このインスタレーションは、秋から冬にかけて展示され、11月の雪にも耐えながら残されていた。
厳しい天候は「住まい」の大切さを改めて感じさせると同時に、納屋が鳥にとっていかに大きすぎるか、そして人間がいかに過剰な広さを当然のように暮らしの中に取り入れているかを際立たせた。
小さな鳥の巣箱と同じ「住む」という目的でありながら、そのスケールの違いが私たちの暮らし方を問いかけてくる。
ヒューマン・バードハウス 2008年1月、シュイルキル環境教育センター(アメリカ・フィラデルフィア)にて雪の中に展示された様子

IMAGINE HERE AND THERE – こことそこ
IMAGINE HERE AND THERE – KOKO TO SOKO
2007年
— 文:ヴィンセント・ロマニエロ
《Imagine Here and There - KOKO to SOKO》は、アメリカ・フィラデルフィアにあるシュクイルキル環境教育センターでの宮森敬子のインスタレーション作品のタイトルである。彼女は長年にわたり自然をテーマとした作品を制作しており、中でも巨大な木の根を透明なプラスチックのキューブに浮かべたインスタレーションでよく知られている。
本作では、アメリカと日本の森で採取した樹木の表面を、木炭で紙に写し取った「樹拓」を用いている。アメリカで制作したドローイングを日本に持ち帰り、日本で描いたものを再びアメリカに持ち込むという、場所を越えた往還が作品の核にあり、それがタイトルにも反映されている。
また、本作にはテクノロジーの要素も取り入れられ、フィラデルフィアの打楽器奏者・牧原としと、日本の打楽器奏者・三浦能(ちから)によるライブ映像パフォーマンスが、日本とアメリカをインターネットでつないで行われた。
Imagine Here and There(KOKO to SOKO) 2007年 フィラデルフィアにて開催された《Greenmachine》展でのパフォーマンス作品
2007年5月6日、フィラデルフィアのシュイルキル・センターにて開催された展覧会《Green Machine》のオープニング・レセプションが行われた。日曜日の午後7時45分(フィラデルフィア)と、日本時間の月曜日午前8時45分、2人のパーカッショニスト──牧原とし(フィラデルフィア)と三浦能(日本)──が、地球の両側から同時に演奏を開始した。
ふたりは主に枝や石、自然の中で見つけた素材を楽器として用い、その場で即興的に音楽を紡いだ。鳥たちのさえずりが合唱のように交じり合い、静かに始まった演奏は、やがて力強い打楽器の響きでクライマックスを迎える。
このパフォーマンスは、宮森敬子の展示の「テクノロジーの要素」として構想されたものである。展覧会タイトル《Imagine Here and There(ここ と そこ)》が示すように、彼女の意図はこのパフォーマンスによって多くの来場者の前で具現化され、シュイルキル・センターの美しい自然環境によってさらに強く印象づけられた。
またこの日、宮森はフィラデルフィアの木で樹拓を採取し、同じ時間、日本でも別のアーティストが樹拓を取るというパフォーマンスも行われ、「つながり」というテーマをさらに象徴的に表現した。